「関税100%で受取拒否されました」|越境ECセラーが知らない”関税地獄”の実態

「関税100%で受取拒否されました」|越境ECセラーが知らない"関税地獄"の実態

国際輸送・税関のイメージ

越境ECのコンサルティングをしていると、セラーさんからよく聞く悩みの一つが「バイヤーの関税拒否」の問題です。私は、日系大手金融機関のインドネシア現地法人で4年間勤務した経験があります。当時、日本企業の現地法人がいかに意思決定に時間がかかるかを内部から目の当たりにしました。本社への過度な忖度、稟議の連鎖、「とりあえず様子を見よう」の繰り返し——。一方で、海外では業界のキーパーソンと驚くほど簡単に繋がれるという発見もありました。日本国内では到底アポが取れないような人物が、現地のビジネスイベントで隣に座っていたりするのです。

インドネシアでの4年間で現地に多くの友人もできました。その経験を通じて肌感覚として学んだのは、各国の商慣習や税制の複雑さです。「ルールは同じでも、運用はまったく違う」という感覚を現場で学んだことが、関税問題に対する実務的な視点の背景にあります。

「商品は発送したのに代金が回収できない」「返送されてきたが、また関税を払わなければならない」—そんな事例が後を絶ちません。今回は、実際にあった事例をもとに、関税拒否問題の実態と対策を整理します。

「関税100%で受け取り拒否されました」メキシコの事例

あるeBayセラーさんの話です。メキシコのバイヤーに商品代金200ドルの商品を発送したところ、「関税が200ドルかかると言われた。そんなに払えないから受け取れない」と連絡が来たそうです。

メキシコの輸入関税は品目によって異なりますが、電子機器や衣料品などでは実効税率が商品代金と同額近くになるケースがあります。2023年のメキシコの平均実行関税率は約6%ですが、特定品目では大幅に高くなります。加えて、メキシコではIVA(付加価値税)16%と、場合によっては特別税も課されるため、バイヤーが受け取るまでに想定外のコストが発生することがあります。

このセラーさんの場合、商品は返送されてきましたが、今度は日本への再輸入時にも手続きが必要になりました。

ブラジルの「輸入税60%」問題

ブラジルは世界でも有数の高関税国です。一般消費財に対する実効税率は60%に達することがあり、「SISCOMEX」と呼ばれる複雑な輸入システムも存在します。

ブラジルのバイヤーは「関税を知らずに購入した」というケースが多く、受け取り拒否率が他の市場より高いと言われています。実際、あるセラーさんは「ブラジルへの発送は諦めました。受取拒否率が30%を超えていて、リスクが高すぎる」と話していました。

ダブルで損失になる「返送後の再輸入」

関税未払いで返送された荷物には、再輸入時にも関税が発生する可能性があります。通常、海外に輸出した商品を返送で受け取る場合は「再輸入免税」の手続きが使えますが、これには条件があります。

再輸入免税(関税定率法第14条第10号)を適用するには、輸出時に「輸出許可書」が必要で、かつ輸出後2年以内の返送であることが条件の一つです。手続きを知らずに通常通関してしまうと、自分が輸出した商品に関税を払う羽目になります。

各国の関税制度の違い

米国:800ドルのde minimis(少額免税)

米国は800ドル以下の輸入品に関税・手数料が免除されるde minimis制度があり、日本のeBayセラーにとってはビジネスしやすい環境でした。ただし2025年のトランプ政権による関税政策変更の影響で、この制度の見直しが現実のものとなっています。米国市場への依存度が高いセラーほど、EU・UK市場の開拓が急務になっているのではないでしょうか。

EU:150ユーロのIOSS制度

EU向けでは150ユーロ以下の商品にIOSS(Import One Stop Shop)という仕組みがあり、事前にVATを徴収することでバイヤーの通関負担を軽減できます。IOSSに登録することで、バイヤーが「想定外の請求」を受けるリスクを下げられます。

オーストラリア:1,000AUDルール

オーストラリアは1,000AUD以下の輸入品は関税が免除されますが、GST(10%)はプラットフォームが代理徴収する形になっています。eBayがGSTを代理徴収しているため、バイヤーが別途支払いを求められるケースは少ないと思われます。

DDP vs DDU:どちらを選ぶか

DDPとはDelivered Duty Paid(関税込み配送)、DDUはDelivered Duty Unpaid(関税別配送)の略です。

DDPのメリットは、バイヤーが関税を気にせず購入できること。デメリットは、セラーが関税コストを負担・計算する必要があること、関税が予想より高かった場合に損失が出ることです。

DDUのメリットは、セラーの関税リスクがないこと。デメリットは、バイヤーが想定外のコストに驚いて受け取り拒否するリスクがあること。高関税国向けにはDDPを検討するか、そもそもその国への発送を制限することも一つの戦略ではないでしょうか。

関税リスクの高い国・地域

経験的に関税拒否リスクが高いとされる国・地域の傾向をまとめます。

・ブラジル:輸入税最大60%、複雑な輸入手続き

・メキシコ:品目によっては実効税率が高くなる場合がある

・インド:電子機器等に高関税、輸入規制あり

・トルコ:関税に加えSCT(特別消費税)が課される場合あり

・ロシア:現状は物流・決済の問題も大きい

関税拒否を事前に防ぐための対策

・商品説明ページに「バイヤー負担の関税が発生する場合があります」と明記する

・関税リスクの高い国へは発送制限を設定する(eBayのShipping exclusion list活用)

・梱包明細書(Commercial Invoice)の金額記載を正確に行う(過少申告はリスクがある)

・DHL・FedExなどを使う場合、DDP送料として関税を事前見積もりするサービスを活用する

・返送が発生した場合は、速やかに再輸入免税手続きを確認する

まとめ

関税拒否は「バイヤーの問題」ではなく、「セラーが事前に対策できる問題」であることが多いと思っています。各国の関税制度を把握し、リスクの高い市場への対応を準備しておくことが、越境ECを持続的に運営するうえで重要ではないでしょうか。

手前味噌ですが、オプティでは、関税対応を含む越境EC税務の包括サポートを提供しています。再輸入免税の手続き方法から、各国向けの発送戦略の整理まで、お気軽にご相談ください。

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