GPSR(一般製品安全規則)と認定代理人(AR)|EU販売に必要な対応と確認事項の全体像

GPSR(一般製品安全規則)と認定代理人(AR)|EU販売に必要な対応と確認事項の全体像

GPSR(一般製品安全規則)と認定代理人(AR)|EU販売に必要な対応と確認事項の全体像

2024年12月13日、EU全域で「一般製品安全規則(General Product Safety Regulation / GPSR)」が本格施行されました。これにより、EU域内で消費者向け製品を販売するすべての事業者——EU域外の製造者を含む——に対して、新たなコンプライアンス義務が課されています。

本記事では、GPSRの制度概要、事業者に求められる対応事項、そしてEU域外事業者にとって特に重要な「認定代理人(Authorised Representative / AR)」の役割について解説します。

GPSRとは何か

GPSRは、EU域内で販売されるすべての非食品消費者向け製品に対して、高い水準の安全性を確保することを目的とした規則です。従来のGPSD(General Product Safety Directive / 一般製品安全指令、2001年制定)を置き換える形で、より包括的かつ厳格な要件を定めています。

GPSDが「指令」であったのに対し、GPSRは「規則」であるため、EU全27加盟国で直接適用されます。各国の国内法への置き換えを待つ必要がなく、統一的なルールとして機能する点が大きな違いといえるでしょう。

GPSRの適用範囲

GPSRは非常に広い適用範囲を持っています。

・EU域内で消費者に販売されるすべての非食品製品が対象です
・新品・中古品を問いません
・オンライン販売(Amazon、eBay等のマーケットプレイス含む)も対象です
・EU域外から直接消費者に販売する場合も適用されます
・特定の分野別規制(医薬品、医療機器、食品等)が適用される製品は除外されます

つまり、日本からEU向けにAmazonやeBayで商品を販売している事業者は、ほぼすべてがGPSRの対象となる可能性があります。

GPSRが事業者に求める主な義務

1. 製品安全性の確保

EU域内で販売する製品は、正常な使用条件において安全でなければなりません。これには、製品設計、素材、パッケージング、使用説明書、警告表示など、あらゆる側面が含まれます。

2. 技術文書(テクニカルファイル)の作成・保管

製品が安全基準を満たしていることを示す技術文書を作成し、最低10年間保管する義務があります。文書には、リスク分析、適用規格、試験結果などが含まれます。

3. 製品ラベリング・表示要件

以下の情報を製品またはパッケージに表示する必要があります。

・製造者の名称・登録商標名・連絡先住所
・製品の識別情報(型番、バッチ番号、シリアル番号等)
・EU域内の責任者(認定代理人)の名称・連絡先住所
・適切な警告表示(該当する場合)

4. トレーサビリティの確保

サプライチェーン全体を通じて、製品の追跡が可能な状態を維持する必要があります。問題が発生した場合、迅速にリコールや是正措置を実施できる体制が求められます。

5. 事故・リスク情報の報告義務

製品事故が発生した場合、または安全上のリスクが判明した場合、Safety Gate(旧RAPEX)を通じてEU当局に報告する義務があります。

認定代理人(Authorised Representative / AR)とは

GPSRにおいて、EU域外の製造者が特に注意すべきなのが「認定代理人(AR)」の任命義務です。

EU域外に所在する製造者がEU市場に製品を販売する場合、EU域内に所在する認定代理人を指定し、その名称・連絡先を製品またはパッケージに表示しなければなりません。これはGPSRの新たな要件であり、従来のGPSDにはなかった義務です。

認定代理人の役割

ARは単なる「住所貸し」ではありません。以下のような実質的な責任を担います。

・当局からの要請に応じて、技術文書やDoC(適合宣言書)を提供すること
・製品の安全性に関する問い合わせへの対応窓口となること
・製品が安全でないと判明した場合、製造者に通知すること
・当局と協力してリコール等の是正措置を実施すること
・Safety Gateへの事故報告を行うこと(製造者が対応しない場合)

ARを任命しない場合のリスク

ARを任命していない場合、以下のリスクが発生する可能性があります。

・Amazonが商品リスティングを削除する(2024年12月以降、実際に大量削除が発生しています)
・eBayでも同様の措置が取られる可能性があります
・EU域内の税関で製品が差し止められることがあります
・各国の市場監視当局からペナルティを受ける可能性があります
・最悪の場合、EU市場からの撤退を余儀なくされることも考えられます

Amazonマーケットプレイスにおける影響

AmazonはGPSRの施行に合わせて、2024年12月13日以降、GPSR要件を満たさない製品のリスティングを非公開にする措置を実施しています。具体的には以下の情報がSeller Centralに登録されていない場合、出品が停止されます。

・EU域内の責任者(ARまたは製造者/輸入者)の名称と連絡先
・製品の安全性に関する警告表示(該当する場合)
・製品画像にARの情報が確認できること

実際に、2024年12月以降、AR情報の未登録を理由に数万件規模のリスティング削除が発生したと報告されており、日本のセラーにも大きな影響が出ているようです。

オプティのGPSR認定代理人(AR)サービス

手前味噌ですが、オプティではEU域内に拠点を持つネットワークを活かし、日本企業向けのGPSR認定代理人(AR)サービスを提供しています。

オプティが確認・対応する内容

ARとして以下の業務を包括的にカバーしています。

・製品情報の確認:製品カテゴリ、対象市場、販売チャネルの整理
・技術文書の確認:テクニカルファイルの有無、内容の妥当性チェック
・DoC(適合宣言書)の確認:EU安全基準への適合状況の確認
・ラベリング要件の確認:製品・パッケージへの必要表示事項のチェック
・AR情報の提供:オプティのEU拠点情報を製品ラベル・Amazonリスティングに使用
・当局対応:EU市場監視当局からの問い合わせへの対応窓口
・Safety Gate報告:製品事故発生時の当局への報告サポート
・リコール対応:是正措置が必要な場合の現地対応サポート

対応の流れ

1. お問い合わせ・ヒアリング:製品情報、販売チャネル、現在の対応状況の確認
2. 要件分析:GPSR上の義務と現状のギャップ分析
3. 技術文書・DoC確認:既存文書のレビュー、不足事項の特定
4. AR契約締結:オプティがEU域内の認定代理人として正式に就任
5. Amazon/eBay登録:Seller CentralへのAR情報登録サポート
6. 継続モニタリング:規制変更や当局からの通知への対応

オプティ自身も、海外のベンダーやパートナーとの協業で多くの苦労を重ねてきた経験があります。GPSRのような規制対応は、単に書類を揃えるだけではなく、EU当局の期待値や現地の実務慣行を理解した「ブリッジ」としての機能が求められます。その点において、15年以上にわたる国際税務・法務の実務経験が活きていると考えています。

GPSRの認定代理人サービスについて詳しくはオプティのGPSRサービスページをご覧ください。

📚 体系的に学ぶなら Taxmen School 越境ECの税務・規制対応を講座で体系的に学べます。詳しくはこちら

Related Articles

Amazonアカウントが突然凍結される前に|GPSR・EPR・VAT対応が急務な理由

Amazonのアカウント凍結は予告なく起きる。「昨日まで普通に売れていた商品が今日いきなりリスティング削除された」「朝起きたらアカウントが停止されていた」という経験をしたセラーは少なくありません。規制対応の遅れがビジネスを止めるリスクは、年々高まっています。本稿ではAmazonの規制強化タイムラインと、GPSR・EPR・VATそれぞれの対応状況を客観的なデータで整理します。

Amazonアカウント凍結の実態

Jungle Scout「State of the Amazon Seller 2023」によれば、調査対象のAmazonセラーの26%が過去1年間にアカウントまたはASINの停止を経験したと回答しています。停止理由の上位は「ポリシー違反」(34%)、「知的財産権の問題」(22%)、「商品安全・コンプライアンス違反」(18%)です。

2022〜2024年にかけてAmazonはEU市場における規制対応要件の未充足を理由としたリスティング削除・アカウント停止を強化しており、特にGPSR・EPR・VAT未登録を理由とした措置が増加しています。停止期間中の売上損失は大きく、回復まで

Amazonバーコードの基礎知識|UPC・FNSKU・GS1の違いと2026年の変更点

Amazonのバーコード制度について、海外のEC専門YouTubeチャンネルがわかりやすく解説した動画が公開されています。2026年の変更点を含む重要な内容なので、そのポイントを日本語でまとめてご紹介します。

Amazonセラーが知っておくべきバーコードの基礎知識

Amazonに商品を出品する際、バーコードは避けて通れない重要な要素です。UPC・FNSKU・GS1など複数の種類があり、それぞれの役割や使い分けを正確に理解していないセラーも多いといわれています。海外のECコンサルタントによると、バーコードの設定ミスが原因で出品ができなくなったり、商品が他のセラーの商品と混在してしまったりするトラブルが起きているとのことです。

UPC・FNSKU・GS1の違いと役割

UPC(Universal Product Code)

UPCは「ユニバーサル・プロダクト・コード」の略で、世界的に広く使われている商品識別番号です。日本ではJANコードとして馴染み深いものですが、アメリカではUPCが標準となっています。Amazonに新商品を登録する際には、このUPCコードが必要になります。

eBay magで多国展開する際の落とし穴|シッピングポリシーのバグに要注意

トランプ関税の影響でアメリカ向け越境ECが難しくなっている今、EU・UK市場への注目が高まっています。そこで多くのセラーが活用しているのがeBayの多国出品ツール「mag(マグ)」です。便利な反面、いくつかの重大なバグや落とし穴があることがセラーコミュニティで話題になっています。今回はその実態をまとめます。

eBay magとは何か

eBay magは、eBay.comに出品した商品を自動的に複数の国のeBayサイト(eBay.de、eBay.co.uk、eBay.frなど)に同期させるツールです。一度の出品作業で複数市場をカバーできるため、効率的な多国展開を可能にします。

2025年現在、日本のeBayセラーの間でもmag利用者は増加傾向にあります。特にEUのIOSS(輸入ワンストップショップ)登録との組み合わせで関税処理を簡素化できる点が注目されています。

EU向けの警告メール問題

magを使い始めたセラーからよく聞くのが「eBayからEU向け出品に関する警告メールが来た」という話です。EU規制対応(PSE/PSCマーク、GPSR、EPRなど)が強化される中、eBay