国ごとの税金と制度、何から手をつけるか

国ごとの税金と制度、何から手をつけるか

国ごとの税金と制度、何から手をつけるか

OPTIの淵上です。

前回の記事では、越境EC市場が実際に拡大していること、しかし「伸びている=儲かる」ではないことを論じました。

今回は国ごとの税金と制度に、どう向き合うかです。

PIVOTの番組でもこのテーマを取り上げましたが、時間の都合上かなり割愛せざるを得なかったため、本稿でより丁寧に考察してみます。


「税金のことは後で考えよう」が招く事態

越境ECを始める際、多くの事業者が最初に検討するのは「何を売るか」「どこで売るか」「いくらで売るか」です。

税金の問題は、後回しにされがちです。

その背景は理解できます。税務の話は複雑で、事業の拡大より先に取り組むべきとは感じにくい。まず商品を出品して、売上が立ったら考えよう。そう思うのは自然な判断といえます。

しかし、売上が立ってから対応に追われるケースを、現場では多数見てきました。

番組でもお話ししましたが、米国だけでも税の管轄地は14,000以上あります。税率の組み合わせは3億通りとも言われています。EUでは国ごとにVAT(付加価値税)の税率もルールも異なり、申告期限が10日しかない国も存在します。

こうした状況を「後で考えよう」と先送りにすると、気づいた時点では相当な対応コストが発生している可能性があります。


国ごとに「何が違うか」をざっくり知る

全ての詳細を把握する必要はありません。ただ、「国によってこれほど制度が異なる」という認識は持っておくべきではないかと考えます。

EU(ヨーロッパ)

・VAT登録が必要になるケースが多い
・IOSS(輸入ワンストップショップ)という仕組みがある(150ユーロ以下の小口取引向け)
・GPSR(一般製品安全規則)でEU域内に責任者の設置が必要
・EPR(拡大生産者責任)で包装材の登録が求められる国がある
・デ・ミニミス(少額免税)は廃止の方向にあり、少額取引でも課税される可能性がある

米国

・VATではなくSales Tax(売上税)
・州ごとにルールが異なる(税率も課税対象も)
・「経済的ネクサス」という概念があり、一定の売上を超えるとその州での納税義務が発生する
・連邦レベルの統一ルールが存在しないため、50州それぞれへの対応が求められる

英国

・Brexit後、EUとは別にVAT登録が必要
・£135以下の取引は売り手がVATを徴収する仕組み
・EUのIOSSとは異なる制度

韓国

・電子サービスへの課税が強化されている
・マーケットプレイス法により、プラットフォーム事業者による代理徴収が拡大
・電子インボイス制度(세금계산서)が導入されている

東南アジア

・タイ、インドネシア等でEC規制が段階的に強化されている
・国ごとに制度の成熟度が大きく異なる
・現時点で規制が整備途上の国でも、数年後には大きく変わる可能性がある


「知らなかった」では済まされない時代

以前は、一定の状況において「知らなかった」という事情が考慮されるケースもありました。

しかし各国の税務当局は、デジタル化を急速に進めています。データの照合が容易になり、越境ECの取引を把捉する能力が格段に向上しています。

番組でもお伝えしましたが、インボイスの記載事項も国ごとに定められています。ECサイトを構築する段階からこの点を考慮しておかないと、後から対応するためのコストと工数は相当なものになります。

「規模が小さいから問題ない」「まだ売上が少ないから大丈夫」とお考えの事業者の方も多いですが、VAT登録義務の基準は国や事業者の状況によって大きく異なり、想定よりも早い段階で登録が必要になるケースも少なくないようです。個別の判断は専門家にご相談されることをお勧めします。


じゃあ何から始めればいいのか

全ての内容を一度に理解することは現実的ではありません。16年にわたってこの業務に携わってきた私自身も、毎年新たなルールへの対応に努めています。

まずは、現在販売している(またはこれから販売を検討している)国について、最低限以下の点を確認することをお勧めします。

・その国で税の登録義務があるか
・あるとすれば、しきい値はどの水準か
・申告頻度はどうなっているか(月次、四半期、年次)
・製品安全規制(GPSR、EPRなど)への対応は必要か
・インボイスの要件はどうなっているか

不明な点があれば、専門家に確認するという判断で問題ありません。重要なのは「確認すべき論点が存在する」と認識していることです。その認識があるだけで、リスクは大幅に低減できると考えます。


次回予告:TAXテクノロジーと電子インボイス

ここまで読んで、「これを全て手作業で対応するのは現実的ではない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

その通りです。だからこそ、TAXテクノロジーが存在します。

次回は、税率計算の自動化、電子インボイス対応、そしてこれらのテクノロジーをどう選定し、どう導入するかについて考察します。

(次回:「TAXテクノロジーと電子インボイスの話」)


越境ECにおけるTAXテクノロジー活用について、さらに詳しく知りたい方はこちらのページからホワイトペーパーをダウンロードいただけます。

関連プレスリリース:オプティ株式会社、Shopify Japanと共にPIVOTに出演(PR Times)

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