越境ECマーケティングの先にある、税務という見落とされがちな課題

越境ECマーケティングの先にある、税務という見落とされがちな課題

越境ECマーケティングの先にある、税務という見落とされがちな課題

OPTIの淵上です。

世界へボカン株式会社の徳田祐希氏が、「ECの未来」チャンネルにおいて、越境ECマーケティングの戦略について網羅的に解説されています。14年以上にわたり日本企業の海外進出を支援されてきた徳田さんの知見には、学ぶべき点が多くあります。

本記事では、動画の要点を整理した上で、越境ECにおいて見落とされがちな「税務対応」の重要性について、私たちの立場から補足させていただきます。


動画の重要ポイント

1. 「本物の価値」を伝えるストーリーテリングの重要性

徳田さんが繰り返し強調されているのは、日本の製品、特に伝統工芸品の「価値の伝え方」です。東南アジア製の模倣品が市場に溢れる中、本物の価値を理解する消費者層は着実に増加しているとのことです。

しかし、品質が高いだけでは選ばれません。その製品が生まれた背景、職人の技術、素材へのこだわり。これらを「ストーリー」として構造的に伝えることが、価格競争に巻き込まれないための鍵になると考えられます。

徳田さんは、Amazonのような大型モールに頼るだけでなく、独自のECサイトを通じてストーリーテリングを行うことの重要性を指摘されています。モールでは商品スペックと価格の比較に終始しがちですが、自社サイトであれば、ブランドの世界観を丁寧に伝えることが可能です。

2. データに基づく市場調査とターゲティング

感覚ではなく、データに基づいた意思決定の重要性も強調されています。Googleキーワードプランナーを活用した市場調査、ターゲット層の分析、競合の動向把握。これらを事前に行うことで、「どの国の、どの層に、何を訴求するか」を明確にしてから参入することが推奨されています。

JETROの調査データや経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」なども、市場選定の際に参考になる資料として挙げられるでしょう(参考:JETRO 調査レポート経済産業省 電子商取引実態調査)。

3. Instagramを活用したビジュアルマーケティング

特に伝統工芸品や日本製品においては、Instagramの活用が効果的であると徳田さんは述べられています。製品の美しさ、製作過程、職人の姿。これらをビジュアルで発信することで、言語の壁を超えたブランド構築が可能になります。

4. BtoB取引の可能性

見落とされがちですが、越境ECはBtoC(消費者向け)だけではありません。海外のセレクトショップやギャラリー、ホテルなどとのBtoB取引も大きな可能性を持っています。徳田さんは、BtoB取引における課題改善にも言及されており、この分野は今後さらに拡大していくのではないかと考えられます。


マーケティングの「その先」にある、税務という課題

徳田さんの動画は、越境ECにおける「売り方」について非常に実践的な内容になっています。ストーリーテリング、SNS活用、データ分析、ターゲティング。これらはすべて、越境ECを成功させるために不可欠な要素です。

一方で、私たちが日々の業務を通じて強く感じているのは、「売り方」を整えた先にある「制度面の準備」の重要性です。

たとえば、こうしたケースがあります。

・Instagramで海外の顧客を獲得し、Shopifyで販売が順調に伸びた。しかし、販売先の国でのVAT(付加価値税)登録を行っていなかったため、税務当局から遡及課税の通知が届いた。

・ドイツやフランスに伝統工芸品を販売していたが、包装材のEPR(拡大生産者責任)登録を行っていなかったため、商品が販売停止になった。

・EU向けに販売を拡大したが、GPSR(一般製品安全規則)に基づくEU域内の責任者を設置していなかった。

マーケティングで集客し、ストーリーテリングで価値を伝え、売上が伸びたとしても、制度面の準備が整っていなければ、その売上が持続可能なものにはなりません。


特に注意が必要な税務上の論点

越境ECに取り組む事業者が、マーケティング戦略と並行して確認しておくべき税務上の論点をいくつか整理します。

VAT(付加価値税)の登録義務
EU、英国、ノルウェー、スイスなど、多くの国でVAT登録義務の有無は事業者の所在地や取引の性質によって異なります。詳細は専門家にご確認いただくことをお勧めします。特にEUのIOSS(Import One-Stop Shop)制度は、150ユーロ以下の小口取引に対応する仕組みとして活用が広がっています。

米国のSales Tax(売上税)
米国では州ごとに税制が異なり、「経済的ネクサス」と呼ばれる基準を超えると、その州での納税義務が発生します。Amazonを通じた販売でも、この義務は適用される可能性があります。

インボイス要件
国ごとにインボイスの記載事項が定められています。ECサイトの構築段階から、販売先の国のインボイス要件を考慮しておくことが望ましいと考えられます。Deloitteの「Tax Transformation Trends 2025」でも、電子インボイスへの対応が加速していることが報告されています。

EPR・GPSR等の非税務規制
税務だけでなく、環境規制(EPR)や製品安全規制(GPSR)への対応も求められます。これらは税務とは異なる領域ですが、未対応の場合、販売停止やペナルティのリスクがあります。


「売り方」と「制度対応」は両輪

徳田さんが解説されているマーケティング戦略と、私たちが専門とする税務・コンプライアンス対応。この二つは、越境ECを持続的に成長させるための両輪ではないかと考えています。

どれほど優れたマーケティングを行っても、販売先の国の制度を理解していなければ、事業の継続性にリスクが生じます。逆に、制度対応だけ完璧でも、売れなければ意味がありません。

越境ECを検討されている方、あるいはすでに取り組まれている方は、マーケティング戦略と並行して、販売先の税制度や規制についても確認されることをお勧めいたします。


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関連プレスリリース:オプティ株式会社、Shopify Japanと共にPIVOTに出演(PR Times)

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複数の調査機関